⑥【くらやみ祭イラストガイド(仮)制作絵日記】 [お祭り関連]

第6話御先払太鼓.jpg

(その6:「お祭りの本を作りませんか」と出版社の扉を叩く。営業編)

2018年1月~2月
取材を重ねていく内に作品のページ数も増えたので
「それなら本にするのはどうだろう」と、今度は書籍化を
検討してみました。そこで色々な出版社に連絡して
「この企画を本にしませんか」と、営業活動を始めたのですが…。

しかし残念ながら、どこからもいい返事がもらえず
スルーされ続けました。地域色が強い作品のせいか、なかなか
思うように事は運びません。試しに自費出版と言う方法も考えて
調べてみたけれど、どうも費用が100万単位でかかるらしい。
「それは無理だな。そんなお金ないし」と、この案は早々に断念。
もうしばらく頑張ってみようと、引き続き粘り強く出版社への
扉を叩き続けました。

折角色々な方に協力して頂いたのに、肝心の作品の形が決まらない
…と、焦りが見え始めた頃、ようやく一軒の出版社さんから
「一度打ち合わせをしませんか?」と声をかけて頂けました。
首の皮一枚で繋がった気分。
作品を気に入って下さったのは、都心にある某出版社の編集Nさん。
打ち合わせの場でNさんは、出版に至るまでの様々な仕組みや流れを
丁寧に教えてくれました。

Nさん曰く「編集の私が作品を気に入っても、社の上の人や
営業担当者を説得できないと、書籍化は難しいです。
説得するためには販売ルートの獲得が大事になります。
この作品、全国的に出版するつもりですが、地域色が強いのが
ネックです。例えば沖縄で「くらやみ祭」が売れるかと言うと…(無言)
恐らく地元周辺では需要があると思うので、そこでの販売ルートを
獲得したいと思います。
初版を××××部として、出版社が独自に持つ販売ルートで
〇冊分は受け持ちますが、かぶらぎさんの方で残り1000部を
販売できるルートはありますか?」と(確か私の記憶ではそのような事を)
言われました。

いや、それは「大丈夫ですよ!」と即答できる数字じゃない。
しかし「難しいですね」と言ったら、書籍化へのクモの糸ほどの
わずかな望みも立ち消えてしまう…かもしれない。
私のセリフに選択肢はない。「善処致します」と言うしかない。

(そしてその後、実際に私は販売ルート探しに奔走するのですが
やはり、これもなかなか上手くは行きませんでした。しかし後日
思わぬ形で突破口が開ける事になります。それについては、また後ほど)

この打ち合わせの時に「この年(2018年)の5月に併せて
出版するのは時間的に無理なので、焦らず丁寧に作品を作って
来年の春を目安に出版する事を考えましょう」とNさんから打診され、
同時に具体的なサイズや、ページ数も明示されました。
締切や枚数がはっきりすると、これまでモヤモヤしていた
霧が晴れて、作品制作も格段にはかどります。
「本にできるかも」と言う、かすかな明るい希望も見えてきたし。

でもそれは、ものすごく細いクモの糸にぶら下がっている様な
いつ切れるともわからない、非常に心許ない希望でした。
とりあえずそれを掴みながら『やるだけの事をやるしかないな』と思いました。

(イラストは御先払太鼓の下書き図。この太鼓の登場シーンは圧巻です)
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⑤【くらやみ祭イラストガイド(仮)制作絵日記】 [お祭り関連]

第5話三之宮太鼓.jpg


(その5:色々な方にお祭りを教えてもらう。取材編)

2017年の年末~2018年1月。
「今現在、実際にお祭りに関っている方に聞かないと、
祭りの詳細は分からない」事に気付いた私は、
観光協会さんが教えて下さった方々にお話を聞かせて
もらう事にしました。そしてこの時に聞いたお話は、
どれもすごく面白く、結果的に「もっと色々な事を
知りたいな」と言う気持ちが強くなります。

お祭りの事を調べ始めた当初、色々な方から「描くなら
各町内を平等に描いた方が良いですよ」と言われていた
のですが、残念ながら当時の私には様々な方と繋がる
術がありませんでした。
なので、この時取材させて頂いた方々に「〇之宮に
お知り合いはいませんか?」とか「△△に詳しい方を
ご存知ですか?」と言う風にお尋ねして、知人を紹介して
頂く形で少しずつ取材先を開拓していきました。

『そこには友達がいるから、今ここで電話をかけて
あげるね』と言う風にすぐに繋がる町内がある一方で、
なかなか繋がらず、取材者に行きつくまでに3~4人
ぐらいを経由してようやく…と言う事も多々ありました。
このように地道に人づてに人脈を広げて行ったので、
全ての町内の取材を終え、どうにか紙面が埋まるぐらいの
情報を得るまでに、約8か月程かかりました。
けれどお会いした方はどなたもとても親切で、お忙しい
中、貴重なお時間を割いて色々な質問に丁寧に答えて
下さったり、その後の監修まで引き受けて下さいました。

一つでもどこかの町内(宮)に繋がらなかったり、
断られたりしたら、企画自体が成り立たず、今まで取材
してきた事も無駄になってしまったので、最後まで取材を
遂行できた時はホッとしました。感謝しかないです。

今回私がお会いした方以外にも、お祭りにお詳しい方は
まだまだたくさんいると思います。実際に私自身も
『この方からもお話を伺いたかったな』と思う人もいる
のですが、人づてに繋ぐ方法を取ったので、残念ながら
上手く行き会えなかった方も大勢いました。
また気になる組織や団体もありましたが、紙面の関係上、
描ききれなかったり…。至らず失礼な部分も多々あります
が、限られた時間や内容の中で、出来る限りの事を描いて
いきたいと思っています。

こうして取材を進めるに従って、当初はお祭りで使われて
いる烏帽子や半纏などの「道具」が気になっていたのが、
「ご神事」や「町内」も入れて3本柱で描いてみようと
言う風に考えが変わっていきました。しかしそうなると、
内容はもう冊子の分量では対応できない枚数になります。

「それなら書籍化を考えてみよう。この企画を本にして
くれる所を探してみよう」と思い立ち、取材と並行して
出版社への営業活動も開始しました。

(イラストは三之宮さんの太鼓、下書き図です)

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④【くらやみ祭イラストガイド(仮)制作絵日記】④ [お祭り関連]

第4話五町青年はんてん.jpg

(その4:お祭りを調べ始める。そして相談者を探す。調査編)

2017年秋、お祭り作品の本格的な制作に着手しました。
まずは文献やDVDなどの映像資料から、お祭りの全貌と歴史を
捉えてみました。図書館や観光情報センター、神社の宝物殿、
郷土の森などに何度も足を運んでは、本を借りたりDVDを
買うなどして、少しずつ資料を集めました。

しかし…調べていく内に、そう言った資料だけで
お祭りを知るのは少し難しいかなと気付きました。
書かれた年代が古かったり、モノクロの写真や図解ばかり…
など「最新の情報をカラーで描きたい」と思うと、
独学では限界がありました。それに前回記した
「作った後の販売場所」についても調べる必要があります。

そこで「お祭りに関っていて、紙媒体の情報を提供している所」
という事で、府中観光協会さんに相談に行きました。
いきなり現れた私に対し、忙しい観光協会の方々は
親切に色々調べて下さいました。今回お聞きした事は2点。
「お祭りを描いて、出来たら冊子のような物を作りたいです。
更にこうした企画を観光協会さんの方で採用して頂ける事は
ありますか?」「お祭りに詳しい方を探しています。
どなたにお話を伺うのが良いでしょうか?」という事でした。

その結果
1、観光協会では(お祭りで)冊子形式の情報誌を作った
  前例がなく、予算の関係もあるので制作する事は難しい。
2、その冊子は「観光」という位置づけが出来るか?
3、個人の営利目的の物販を、お祭り当日に協会のブースで
  行う事は難しい。
と、確か(私の記憶では)そういう様なお返事を頂きました。

なるほど、確かに。
そうなると「お祭り当日にテントなどで販売する」と言う
当初のイメージは、少し軌道修正した方が良さそうです。
ただお祭りに詳しい方に関しては、観光協会さんに
関わりがある人のお名前を、数名教えて頂けました。

気付けば世の中は、すでに年の瀬も押し迫った
慌ただしい時期でしたが「冊子を作って次のお祭りまでに
完成させるなら、早くに取材をした方が良い」という事で、
年末年始にかけてお祭りの取材が開始されました。

(イラストは五町の青年会の半纏(下書き)。着色したら
きっと色とりどりで綺麗です)

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③【くらやみ祭イラストガイド(仮)制作絵日記】 [お祭り関連]

第3話えぼしラフ.jpg

(その3:どんな形の作品にしようかな。イメージ編)

作品を描く決心をしたら、次は「どのような形状の物を作ろうか」
という事を考えました。サイズやページ数などをあらかじめ
具体的に決めた方が、それに合わせて描きやすいですし、
無駄がないからです。
その結果、当初は…

1、薄めの冊子(36ページぐらいの物)
2、ワンコイン(500円)で買える値段
3、オールカラー

と言う形状をイメージしていました。

理由は、私自身がお祭り当日に道を歩きながら
「これはなんだろう?もう少し詳しく知りたいな」と
思う事に出会った時、お釣り銭なしで手軽に買える、
持ち運びに便利な軽い形状のガイドブックがあったらいいな、
と思ったからです。そしてそれぐらいの冊子なら、
自分で費用を出して(自分の力量で)確実に作れそうだから。

また内容的にも枚数が限られているので、
パッと目につく物だけ(例えば烏帽子とか
半纏(はんてん)など)を紹介すればいいかな、
と考えていました。

しかし…このイメージのままで行くと、お祭り当日に
冊子を販売させてもらう場所が必要になります。
そういう課題についてはどうしようか。でもとりあえずは、
自分で調べてどんな物がどの様に描けるかを試してみてから、
動き出そうと思いました。

(イラストは烏帽子に関する項目の下書き(一部)です)

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②【くらやみ祭イラストガイド(仮)制作絵日記】 [お祭り関連]

第2話お祭りラフスケッチ2.jpg

(その2:みんなはお祭りのこと知ってますか? リサーチ編)

久しぶりにお祭りを観に行き、何にも知らない事に
軽い衝撃と焦りを覚えた私は、とりあえず近辺の方々に
その感想を伝えてみました。
(この場合の近辺とは屋台や催しは楽しむけれど、実際に
お祭りに関ったり参加することがない市民の方と言う意味)

すると思いの外、多くの人から「実は自分も良くわからないんです、
お祭りのこと」と言う反応を頂きました。
よそから府中に越してきた人や、結婚を機に定住された方は
もちろんの事、親子二代の長きに渡って暮らしていても
「親もよく知らないから教えて貰えない」と言う人もいました。
リサーチした年代も20代~50代と幅広く、そしてその人たちが
口をそろえて言うには「地元の有名なお祭りだから知りたいとは
思うけれど、今更聞けない」とか「誰に聞いたらいいのか
わからない」という事でした。

「どうやら市民でも結構知らない人がいるみたい。それなら
市外から来る観光客の方は、もっと知らないんじゃないかな。
折角お祭り対する関心が高いのに、何だかもったいないな」と思い、
ますます『調べた事を伝えたい』と言う気持ちが強くなりました。

しかし当初は「文献や資料を見ればすぐに分かるだろう」と
簡単に考えていました。けれど色々分かってくると、今度は
「お祭りの全貌を知る人はいないよ」と言う言葉が
時々耳に入ってきました。
更には実際にお祭りに関っている、内情に詳しそうな人々からも
「お祭りの期間中は自分の町内にずっといるから、他(の町内)が
どういう風にお祭りを行っているか知らない」と言われ始めます。
そうなるとますます知りたくなり、好奇心も湧くのですが…
これだけ「よく知らない」と口にする方が多い中、果たして
そう易々とわかるものなんだろうか?

広大な調査と創作がここから始まりました。

(イラストは2017年のお祭りで描いたスケッチ。
人々の営みと共にあるお祭りの姿を描きたいです)


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①【くらやみ祭イラストガイド(仮)制作絵日記】 [お祭り関連]

第1話本町行進図.jpg


(その1:どうして作品を作ろうと思ったか? きっかけ編)

「くらやみ祭」と言うのは府中(東京)にある大國魂神社の
例大祭の名称で、かなり規模が大きく壮麗なお祭りです。
実は今、このお祭りに興味を抱いて少しずつ絵を描いています。

どうして作品を描こうと思ったのか、実際動いてみると
どんな感じで進行するのか、完成形はどんな感じになるのか、
もとより「くらやみ祭」をイラストで描き起こすこと自体が
可能なのかどうか…。
そんな紆余曲折の制作秘話を、2019年春位までの
期間限定連載でお伝えしていこうと思います。

初回は「制作のきっかけ編」。
お祭りは子供の頃に遊びに行っては、露店で買い物したり、
神輿や太鼓や山車を見たり…と、そう言ったごく普通の
観光客の方と変わらない楽しみ方をしていました。
しかし大人になって仕事を始めると、都心に出たり、
お祭り期間中の5月の連休が忙しくて休めなかったり。
その内に家族の介護も始まって、すっかりお祭りからは
遠ざかっていました。

父が亡くなって介護が終了した時、ようやく時間に余裕が生まれ
「そう言えば、父もお祭りが好きだったな」と思い出しながら、
久しぶりにその年のお祭りを観に行ってみました。
そこで目にしたのは、お祭りを見に来ている観光客や親子連れなどの
楽しそうな様子でした。この光景は絵になるんじゃないかな。
そう思いつくと急に興味がわき始め、その年は3日間お祭りに通って
主に市井の人々をスケッチしていました。

しかしその最中に、当然ながら烏帽子(えぼし)や
半纏(はんてん)姿の方々を沢山目にするのですが…
「烏帽子に書いてある『御』ってなんだろう?」
「半纏に書いてある『神戸』って何て読むんだろう?」
「見た事ない町名や言葉が多すぎて、一体全体どこの
町内の人が神輿や太鼓のご奉仕をしてるかわからないな」と、
頭の中に「?」が次々に出て来ました。
と同時に「そう言う部分が理解できたら、お祭りをより一層
楽しめるんじゃないかな」と思いつき、続いて
「それをイラストで表現できたら、わかりやすいんじゃないかな!」と、
ポンと閃いたのが全ての始まりでした。

「実態を良く知らない」という事と「思いついちゃう」という事は、
つくづく危険な事だと思うのですが、こうして
「お祭りを描いてみよう」と言う試みが始まりました。

(つづく)



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